電王戦リベンジマッチとそのルール

 

 

ニコニコ生放送にて 電王戦リベンジマッチ 森下卓九段 対 ツツカナを観ました。


将棋電王戦リベンジマッチ 森下卓九段 vs ツツカナ - ニコニコ生放送

 

 

対局そのものももちろんですが、プロ棋士の気力をひしひしと感じ、畏怖の念を抱いてしまう程でした。本当に良いものが見られたと思いました。

格好良かったです。感動しました。 しかし、あまり後味が良いとは言えない終わり方でしたね… そんなことも含めて感じたことを書いてみようと思います。

(※殆ど将棋の内容には触れていません。主にルールに関しての記述です。)

 

まず、勝敗を決する競技では、本当に当たり前で普段ならあえて言うことでもないのですが、第三者の公平な立場でルールは決められるべきだと改めて思いました。

しかし、僕個人としてはプロの思考を垣間見ることができるこの形はショーとして非常に楽しめました。あくまで視聴者から見たショーとして、です。

ただ、勝敗の行方を見届けなければ納得がいかない人にとっては、このルールの決め方はやはり問題があったかと思います。 しかし、だからと言ってブーイングをしてしまうのはお門違いだと思います。

まず大前提としてこれは森下九段 対ツツカナ の対局であって、僕含め視聴者は当事者ではないわけですよ。 視聴者はあらかじめ「森下九段本人が決めたルールで対局を行いますよ」という告知を踏まえたうえで観戦しているのだから、それで対局中に、やれルールに不備があっただのと喚くのはおかしい。ルールに不備があると感じ、「これは勝負事として成立していない」と判断していれば、そもそも勝敗を意識して対局を観ていませんからね。

 

とは言え、そこまできちんと分別をもって視聴すると判断した人はまあかなり少数だと思います。僕自身も特に何も考えず、視聴し始めてからルールを確認するという有様でした。 じゃあお前も結果論でものを言ってるだけじゃねえか、とお思いのことだと思います。そうです、結果論です。

結果論ではありますが、僕はブーイングをせず、この結果になった原因が何たるかを自分なりに考えました。誰だって少し考えれば勝負事のルールとしては決め方が適切でなかった、というところに行きつくと思います。

しかもそのルールはあらかじめ知らされていたわけですよ。それを同意の下で観ていることになるわけですよ。(ルールを認識していた、していなかった に関わらず) 運営側としてはルールを告知しているわけですから、認識していなかったというのは言い訳になりません。ルール確認を怠った自らに非があります。 それを棚に上げて非難を浴びせている人間がいるのを見て僕は虫唾が走りましたよ…

それに(これは個人的な感情ですが)、僕には長時間戦い続けた、またそれを支えてくれた人に対してブーイングを送れる奴の気が知れません。正直恐ろしいと思いました…

 

ただ、非難こそしていませんが、指し掛けという結果になったのは僕もいまひとつ飲み込めていません。(納得することにしていますが)、なぜなら、これは明記されているルールだけでは解決できないからです。厳密に明記されているルールにのみ則るならば、森下九段の投了とするのが正しいのかもしれません。

とは言え、指し掛けというのは立会人の声明で決まったことなので納得せざるを得ないのですが、この立会人が人間であることが僕はどうなのかなと思うんですよね。 現状としては人間がやるほかしようがないとは思いますが… 本当に難しい問題だと思います。ルールに細々と明記してできるだけ立会人の介入を0に近づけるのが最善ですかね。

 

番組の最後に森下九段ご本人が「継盤を使って待ったを認められているような状態で対局をするのはプロとしてどうなのかと思いどうしようか非常に迷った」といった旨のことを仰っていました。 これも本当に難しいことだと思います。(番組として)どちらでも楽しめる人もいればプロとしての普段の対局に近い真剣勝負が見たい人もいるので残念に思った人も必ずいるはずです。 しかし、ここで視聴者は森下九段の判断にとやかく言う資格はないと思います。森下九段の判断に意見することができるのは他のプロ棋士だけでしょう。

 

今回の件でルールというものは、トライ&エラーを繰り返してようやく固まっていくものだということを改めて実感しました。それに加え、既存のルールの偉大さも思い知りました。故きを温めるのは大事ですね。

 

葉山 (@dekai_towel) | Twitter